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【PCAで学ぶ公益法人会計】 第20回:キャッシュフロー計算書~その1

キャッシュフロー計算書とは

公益法人会計基準(平成20年基準)では収支計算書に代わってキャッシュフロー計算書が財務諸表に組み入れられました。作成を義務付けられているのは、会計監査人を設置する公益社団・公益財団となっておりますが、キャッシュフロー計算書とはどのようなものでしょうか?
端的に申し上げれば、一年間の資金の増加(収入)と減少(支出)を集計した財務諸表であるという事になります。お金がいくら増えたのか又は減ったのかという話ですが、旧会計基準で使用していた収支計算書とどこが違うのでしょうか?

資金の範囲

両者の違いはなんといっても「資金の範囲」にあります。
「資金の範囲」とは「何がお金(資金)であるか?」という定義になりますが、それぞれの「資金の範囲」は下表の通りとなります。
旧会計基準の収支計算書における「資金」とは流動資産又は流動負債の中から法人自身が自由な選択をしていました。
一方キャッシュフロー計算書における「資金」とは「現金及び現金同等物」であるとの厳密な定義になりました。
その結果、法人自身の裁量権はかなり縮小し旧会計基準で「資金」としていた勘定科目が新たな基準では「資金」とならない場合も考えられます。

 現金及び現金同等物
 財務諸表の種類資金の範囲 
 旧会計基準・収支計算書 流動資産および流動負債の中から法人自身が定めたもの
 キャッシュフロー計算書 現金及び現金同等物

表示区分

キャッシュフロー計算書では資金の増減を事業活動・投資活動・財務活動の三つに区分して表示します。元来は企業会計等で、法人が資金を産み出す力や資金効率・支払能力などを判断する情報として作成されるものですが、公益法人を取り巻く社会環境の変化に伴って、キャッシュフロー計算書を利用する重要性も高まっています。

キャッシュフロー計算書の表示区分
表示区分表示内容 
事業活動によるキャッシュフロー事業活動を行って生じた資金の増減
 投資活動によるキャッシュフロー固定資産の取得・売却を行って生じた資金の増減
財務活動によるキャッシュフロー借入や借入の返済を行って生じた資金の増減

「直接法」or「間接法」?

キャッシュフロー計算書を作成する際には、「直接法」と「間接法」二つの方法があります。
旧会計基準で作成されていた収支計算書は「直接法」で作成されていましたが、民間企業で作成されているキャッシュフロー計算書は間接法で作成されるケースが多く見受けられます。
公益法人はどちらで行っても問題はありませんが、実務的にはコンピューター会計を採用しているかどうかで決まってしまう事が多いと思います。

コンピューター会計を行っていない手書きで決算を行っている法人が「直接法」でキャッシュフロー計算書を作成するには大変な労力が必要になります。したがって完成した正味財産増減計算書から逆算して作成する「間接法」が現実的な選択となるでしょう。

しかし「間接法」は名前が示す通り間接的・二次的に作成されるものですから、ひとつひとつの取引から直接集計される「直接法」が望ましい事は事実です。コンピューター会計を採用している場合、人間の労力は全く障害となりません。会計ソフトは自動的に「直接法」でキャッシュフロー計算書を作成してくれます。
上記の理由から、コンピューター会計を採用している場合は「直接法」での作成をお勧めいたします。